I. 主要情報
- Seedソリューション: SenseCAP LoRaWANセンサー (S2104 – 土壌水分・温度センサー、S2101- 大気温度・湿度センサー、S2102 – 光強度センサー、S2103 – CO2、温度、湿度センサー、気圧センサー)、SenseCAP アウトドアゲートウェイ、SenseCAP ポータル、SenseCAP Mateアプリ
- プロジェクト推進者: Shaukatali Zahir Hussein、Sahil Abdulalim、Said Kassim、Rahma Mussa
- パートナー: TOIO、Robotech Labs、Seeed Studio
- 業界: 農業
- 導入地域: タンザニア（タンガ）
II. 背景
成長するタンザニア経済における最大の農業課題の一つは、図1に示されるような家畜用の高品質飼料です。残念ながら、現在高品質飼料サプリメントを得るために使用されている手段と手順は、天然資源の過度な使用と環境への悪影響を引き起こしています。
図1. 高品質家畜飼料
(画像提供: FUSMAR)
タンガは伝統的農業の長い歴史を持つ地域ですが、労働集約的な方法論をデジタル化・自動化できる次世代技術やスマート農業技術はまだ十分に整備されていません。Shaukatali Zahir Hussein氏（図2）– タンザニア・オープン・イノベーション機構（TOIO）およびRobotech Labsの創設者兼技術責任者 – によると、このような知識格差は時間とともに深まっており、不安定な微気候パターンが作物の不作につながり、地元の人々を落胆させています。
図2. Shaukatali Zahir Hussein
(画像提供: Shaukatali Zahir Hussein)
Shaukatali氏は、このプロジェクトの背景について詳しい考察を共有しています：
「タンガの27以上の地区から約40%の人々が農業活動に従事しており、それが日々の生計手段となっています。最初に、彼らを訪問して、どのような農業課題に取り組む必要があるかを理解し、どのような技術スキルと知識を伝達し、発展させるべきかを把握する必要がありました。プロジェクトが独特で、適応・採用しやすく、市議会がその普及を促進することを確実にすることを念頭に置いて、AIoTを活用したスマートミズアブ（BSF）養殖に取り組むことを決定しました。このプロジェクトの利点の一つは、有機食品廃棄物を使用してBSFの幼虫を飼育することでした。これは環境への害を少なくする賢明な選択であり、生成される堆肥を副産物として使用することで、化学肥料への農業依存を軽減しました。最も重要なことは、設置に多くのスペースと材料を必要とせず、その大部分が地元で調達可能だったことです。最大効率を確保するために唯一不足していたのは、BSFの成長と健康に直接影響する重要な環境パラメータを監視できるIoTセンサーでした（図3）。そこで、SeedのSenseCAP LoRaWANセンサーとアウトドアゲートウェイを配備して環境を遠隔監視しました。現在、人々はスマートフォンでリアルタイムと時系列の両方で各環境パラメータを監視できます。」
図3. BSFのライフサイクル
(画像提供: Jennifer Larouche)
III. 課題
現在家畜に給餌されている飼料は、すべて高レベルのタンパク質を必要とします。タンザニアでは、そのタンパク質は大豆や魚粉から得られますが、これらはいずれも持続不可能な速度で大量の天然資源を消費しています。良いニュースは、人間の有機廃棄物を使って成長するという事実から、動物飼料のための代替的で安価で持続可能なタンパク質生産方法として、BSF養殖への関心と注目が高まっていることです！
BSFはアフリカ原産の昆虫で、その幼虫は魚、家禽、養豚に必要なタンパク質の約45%を含んでいます（図4）。この飼料は家畜に生きたまま与えることができ、乾燥・加工してタンパク質ミールを作ることもできます。BSF養殖をより持続可能でスマートにするには？実際、課題はBSFの成長、交配、健康の異なる段階において最適な生活環境をデジタルで監視・維持する方法を見つけることでした。
図4. BSF幼虫ベースの動物飼料が農家にもたらす利益
(画像提供: ロックフェラー財団)
IV. ソリューション
TOIOは、タンザニアにおける多様な地域コミュニティ主導の取り組みの開発に焦点を当てた非営利組織です。TOIOが主導し、タンガの地元大学生と市民が共同で「BSF養殖 – タンパク質含有量の創出」プロジェクトを立ち上げました。これは、BSFの生活環境の監視と最適化により、資源効率的で低コストなタンパク質生産手法です。これは、SeedのSenseCAP LoRaWANセンサー (S2104 – 土壌水分・温度センサー、S2101- 大気温度・湿度センサー、S2102 – 光強度センサー、S2103 – CO2、温度、湿度センサー、気圧センサー)、SenseCAP アウトドアゲートウェイ、SenseCAP ポータル、SenseCAP Mateアプリの配備により実現されました（図5）。なお、屋内でのゲートウェイ設置をお探しの方には、SenseCAP M2マルチプラットフォーム LoRaWAN屋内ゲートウェイが最適な選択肢です。屋内使用向けに特別に設計されており、ニーズに完璧に対応する経済的なソリューションを提供します。このプロジェクトは、動物飼料を補完する代替的で持続可能、かつアクセス可能なタンパク質含有量生産手法として、スマートBSF養殖の育成に光を当てています。
V. SenseCAP センサーとアウトドアゲートウェイを選択する理由
Seed IIoT製品シリーズの最初のローンチの中で、SenseCAP はワイヤレス環境センシングアプリケーションに焦点を当てています：スマート農業、精密農業、スマートシティなどです。これは、ハードウェア製品（センサー、データロガー、ゲートウェイ）、ソフトウェアサービス（SenseCAP ポータル、SenseCAP Mateアプリ、オープンダッシュボード）、およびデバイスとデータ管理のためのAPIで構成されています。次世代LoRaセンサーであるS21XX/A110Xシリーズは、LoRaWAN（低消費電力広域ネットワーク）を介した産業用長距離データ取得をユーザーに提供します。スマート農業、スマートビルディング、産業制御など、様々な業界に適しています。IP66等級、-40〜+85°Cの動作温度、内蔵19Ah大容量バッテリーと、デバイスの低消費電力と組み合わせることで、このシリーズは最大10kmの範囲で過酷な屋外環境で最大10年間動作できます。内蔵Bluetooth機能により設定が容易になり、大規模展開コストを大幅に削減します。ユーザーは簡単な設定でアプリケーション開発に集中でき、数ステップでデータ取得を開始できます。デバイスを設置し、QRコードでバインドし、ネットワークを設定するだけで、HTTPやMQTTなどの人気IoTプロトコルをサポートするSenseCAP ポータルからデータを閲覧できます。センサーについて詳しくはこちらをご覧ください。
この背景から、SenseCAP センサー、アウトドアゲートウェイ、ソフトウェアがBSF養殖に選ばれたのは、BSF農場の気象条件を監視し、BSFの最適な成長環境を維持することで最大の産卵率を確保できるからです。Shaukatali氏と彼のチームが最適なIoT製品を選択する際に念頭に置いていた3つの要素がありました：
- ケーブルが不要で、環境パラメータをワイヤレスで測定できる手頃で費用対効果の高いIoT製品
- コンピューターとスマートフォンでの簡単な設定とデータ可視化
- 各環境パラメータの監視状況更新に関する時間毎の通知を自動化して受信
Shaukatali氏は親切にも次のように述べています：
「このため、SenseCAP が私たちのアプリケーションにとって完璧な選択肢となりました！」
VI. 成果
継続的に監視が必要な環境パラメータは、大気温度と湿度、気圧、土壌水分と温度、光強度、CO2でした。理想的には、BSFの交配に適した十分な照明が必要で、大気温度は26-28°C、湿度は60-70%である必要があります。基質の水分レベルは、BSFの卵が孵化して幼虫になるのに十分であり、時間の経過とともに硬化しないようにし、幼虫の移動を防ぐ必要があります。そのため、環境パラメータが所定の数値範囲を超える場合、地元の人々はスマートフォンでメッセージ通知を受け取り、BSFのライフサイクルの様々な期間において最適な環境範囲を維持するための予防措置を講じることができます（図6）。
図6. スマートBSF農場の環境データがSenseCAP ポータルで視覚化されている様子
(画像提供: Shaukatali Zahir Hussein)
屋内のミニBSF農場の環境周辺を3-4日間監視した後、適切な孵化環境内でBSF幼虫の孵化が成功し始めました。アフリカでの広範囲なBSF養殖が6000万トンの従来の飼料生産と肥料を代替する可能性を考慮すると、1500万の雇用創出、8600万トンのCO2排出削減、粗タンパク質市場価値26億米ドルの増加が見込まれます。図7に示すように、このプロジェクトの成功完了後、タンザニアの異なる地域から200人以上の地元住民と政府関係者がSenseCAP対応スマートBSF農場を訪問し、未来の農業実践の全く新しい世界について学びました！タンザニアの明るい未来と、スマートで持続可能な社会への道を勇敢に切り開く若者たちに乾杯！
図7. タンザニアの地元住民と政府関係者がSenseCAP対応スマートBSF農場を訪問
(画像提供: Shaukatali Zahir Hussein)
「これまでのところ、最も素晴らしいことは、このプロジェクトを地域内の異なる地域のコミュニティメンバーと共有できたことです。AIoT対応スマートBSF養殖に対する彼らの驚きと衝撃！彼らはこのプロジェクトを本当に魅力的だと感じており、今では市議会からローンにアクセスするためのコミュニティ青少年グループを形成し、自分たちの農場の設立を始めたいと願っています。これは大きなことです！」
– Shaukatali Hussein、TOIO創設者兼事務局長
VII. 創設者について
TOIOは、地元住民の関心分野に関連する適切なスキル訓練と専門知識の共有を提供することで、地元住民の自己エンパワーメントを促進し、様々な地域コミュニティ主導の取り組み、プロジェクト、イベントの開発に焦点を当てた非営利組織です。最終的には、地元住民が直接主導する地域協同組合の設立を支援し、持続可能な生計を確保することを目指しています。
Robotech Labsは、地域コミュニティに革新的で最先端のソリューションを提供するメーカースペースです。ソフトウェア開発、製品設計、プロトタイピングをお探しの場合、Robotech Labsはあなたのアイデアを実現するための最先端の専門知識と経験を持っています。